実際の学習法

 

では、実際どうすればいいのでしょうか。

 

日本人の学習者は、実際に、「本当に」話せるようになりたい、と思っている人は、少ないように思います。では、なぜ、教室に通ったり、NHKの講座を視聴したりしているのか。それは「漠然と」話せるようになりたい、と思っていて、一方で話せるようになると、外国人と会話しなければならず、それに対する恐怖心も持っています。

 

ですから、練習している間が楽しい、という人も結構多いのです。まちがうことは、恥ずかしいと思えば恥ずかしい、まちがった言い方で相手を傷つけることもあるかもしれません。その意味では恐怖心を持つことは仕方のないことなのかもしれません。

 

いや、それでも話せるようになりたい、と思う人は、まず、「現在」話せることは何かを知ることが大事です。そのためには、まず、話してみることです。

 

相手がいないと、会話ができないと思っている人がほとんどですが、冷静になって考えてみると、会話というのは、例えば相手が「昨日どうだった?」と聞いたとすると、それは数秒ですが、こちらは何分も話し続けることがあります。もちろん、相手の話を聞いている時間もありますが、「自分が話しているときは、自分の話に集中している。」という事実を考えると、会話とは、お互いが代わりばんこに自分の話をしている、つまりモノローグの連続と考えることもできます。

 

 

実は、このモノローグと言う方法が、最大の会話の練習方法です。

これを取り入れられるか、取り入れられないかで、会話の話す内容とスピードに、数か月後に何倍もの差が出てきます。

 

何かを話をすると言うことは、スケートで言えば、足はもちろんのこと、目、腕なども使いますし、それらをコントロールするために、頭がフル稼働します。

 

例えば、ロールプレイや文の暗記では、「暗記能力」の強化にはなると思いますが、「文を組み立てながら同時に声にする」という訓練にはあまりなりません。この、文を組み立てながら声に出すという作業は、「脳の中にある単語や文法の中から(自分にとって)最適なものを探してくるという作業ですので、簡単なことを言うにしても、何行もの文を暗記するより、「脳トレ」になり、しかも、簡単なことでも、たくさんの文を自分で作っていると、自然にスピードがアップしていきます。自分で練習しているスポーツ選手が心に余裕がありいいプレイができるように、「話すこと」に余裕も出てくるため、自分の間違いに気づきやすくなり、また、最近覚えた単語なども自然に出てきたりします。

 

相手と会話ができる環境にある人はもちろんそれはいいことです。日本人ご夫婦で英会話をして英語が話せるようになったという話もききます。しかし、実は、モノローグの方が実践的とも言えます。まず、どこでも、いつでもできます。例えば、朝起きたら10分、昼休みに10分、夕食前に10分と決めて、毎日自分で何かを話をすれば、2、3か月で、はっきり効果を実感できるはずです。また、一人で行うので、まちがうことに対するプレッシャーがないため、脳がリラックスされ、乗った時には、何分でも話すことができ、こうなってくると話していて楽しくなります。

 

どうしてもテーマが思いつかないという人は、What did I do yesterday? やWhat is the most impressive thing recently?、などでもいいですし、まず、I'd like to talk about ~ とまず言いながら、その間に何を話すかを考えるという手もあります。I'd like to talk about ・・・ Otani's today's pitching.でも、I'd like to talk about ・・・ my dogでも、何でもいいのです。大事なのは、多少なりとも自分の関心ごとを話すことです。外国人と話すとき、多くの場合、何かを説明するか、自分人のことや自分の感想を話すことが多いものです。その意味では、I'd like explain about ・・・ this country's education/economy/music/problems/... などもお勧めです。もちろん、こういった内容だとさっぱり話せない、というのが最初は普通ですが、やっているうちに、「何も話せないということはない」ようになるものです。  

 

一人で行うことのもう一つのいい点は、辞書を引けることです。話そうとすると、必ず、英語で何というか分からない単語が出てきますので、その場で調べることは、英単語を増やすのに大変役立ちます。英語の単語を覚えるための本もたくさん出ていますが、「自分に必要な単語」という感じがしないので、どうしてもなかなか覚えられません。「自分にとって必要な単語」とは、自分が何かを話してみて始めて分かるものです。

 

そして、このように話す練習をしていると、これは現在形?、それとも過去形?、いや現在完了形?、だったり、未来のことを話そうとするとき、will?、be going to do?、be doing?、どれを使ったらいいんだろう、などの疑問が必ず出てきます。

 

英語は、主語+動詞+目的語で意味を伝える言葉なので、簡単な文でも必ず動詞が必要であり、動詞には必ず時制を決めるか、助動詞を付けてやらなければなりません。そのためには、知識が必要です。スケートであればよく整備されたリンクがあれば、自己流でもある程度滑れるようになりますが、言語習得では文の作り方の仕組みを正しく知ることが大事です。

 

具体的には、よく言われるように、中学校の教科書プラス解説のついたものや、文法をわかりやすく教えているテキストもたくさんあります。

 

ただ、注意することは、文法項目をたくさん覚えても、それに満足してしまうと何の意味もあれません。文法項目は、話すための「ツール」と考え、使えて始めて役に立つものです。その意味では、覚える文法項目が多くなっていくと、混乱して、「学ぶほどに話せなくなる」危険性があります。特に、日本人の場合探求心が強く、細部にこだわる傾向があります。あまり使わないものには手を出さない、基本をより確実にするのが、お勧めです。また、例えば2つの単語や表現の差異が微妙で、ネイティブでもどっちでもいいと思っているものも多くありますので、どっちでもいいから使ってみる、というのも大事だと思います。

 

最後に、できれば読むことを生活の中に取り入れていただきたいと思います。

英語は外国語ですので、工夫しないと、どうしても脳の方で排除しようとするのかもしれません。

英語を普段生活で使う環境にある方は別として、英語を「慣れた」状態にするには、少しでも活字に触れた方がいいようです。話せる人と話せない人を比較すると、活字を取り入れている人の方が、話せるようなのです。これは、おそらく、活字がイメージとして脳に定着するためと思われます。必ず知らない単語に会いますので、辞書を引いていると、語彙力アップにつながります。読むスピードも上がります。今はスマホでいろいろな英語媒体がありますので、暇な時に探してみれば、興味を持てるものがあると思います。

 

だいたいのことを話せるようになるには、語彙を増やすことはどうしても必要です。単語を知らないがゆえに話せないことが多いのです。

 

リスニングについては、話す練習や少しでも読むようになると、だいたい相手の言っていることが分かるようになります。日常会話では、リスニングの練習をしなくても問題ないと思います。映画やテレビドラマを字幕なしで、という人はリスニング強化も必要かもしれませんが、日常会話ができればいいという方は、特にリスニング練習をしなくても、たまに、ニュースを聞いてみたり、YouTubeを見てみたりでいいと思います。